Header image  
ウェアラブル・ユビキタス・エンタテインメント
の研究を推進しています
 
   最終更新日 2013年11月10日
 
 
 
 


 
ウェアラブルセンシングの課題・応用

  1. はじめに
  2. ウェアラブルコンピューティングと行動認識技術
    1. 行動認識技術に基づくサービス
    2. ウェアラブルセンサを用いた行動認識技術
  3. センシングを活用した情報提示技術
  4. センシングを活用した情報入力技術
  5. ウェアラブルセンサを用いた行動認識の研究動向
  6. おわりに

2 ウェアラブルコンピューティングと行動認識技術

2.2 ウェアラブルセンサを用いた行動認識技術

前節で挙げた各種サービスにおいて重要な役割を果たすのは,加速度センサや温度センサ,GPS,カメラやマイクなどを用いた状況認識技術である.ここで,状況とは「歩行中」「自転車に乗っている」「起きている」「メール着信」「ある時点から10 分後」などといったようにさまざまな表現が可能であり,特にウェアラブルコンピューティング環境におけるサービスで利用される状況は単一または複数のセンサの特徴量から決定される場合が多い.センサとは,GPS や加速度センサなどハードウェア的なセンサに加え,メール着信を検出するメーラなど広い意味でのセンサを含む.特徴量とはセンサから出力されるそのままの値や,その値の一定時間における平均値・分散値などを表す.例えば「現在地が自宅」という状況は具体的に,GPS から得られた緯度および経度の現在瞬間値が,あらかじめ登録されている自宅の緯度経度と一定値以上近いこと,と言い表せる.つまり,「ある状況」を定義するためには下記の手順を踏めばよいことになる.

  1. センサの決定:
    ユーザは多種・多数のウェアラブルセンサを装着していると考えられる.この中から,下表に示すようにどのセンサが定義する状況を表すのに適切かを判断し,使用するセンサを決定する.例えば歩行などの動作を認識する場合は加速度センサが,位置を認識する場合にはGPSがよく用いられる.

  2. 特徴量の決定:
    対象のセンサからデータを取得し,その状況をもっともよく識別できる値(特徴量)に変換する.特徴量としては,センサの瞬時値のほか,一定期間のセンサ値における平均値・分散値・中央値・ピーク値・波形データそのもの・線形近似・包落線・積分値・パワースペクトルなどが挙げられる.これらの特徴量は,下表に示すように対象とする状況によって適切なものが異なり,例えば歩行などの定常的な動作には平均値と分散値を組み合わせて用いることが多く,腕をまわすなどのジェスチャ動作の認識には波形そのものが用いられることが多い.

  3. 認識アルゴリズム(認識器)の決定:
    特徴量を用いてどのように状況の認識を行うかを決定する.アルゴリズムの例としては,記録した学習データ群の中で,センサから取得した値と距離が近いものを選び出すk-NN法(記憶ベース推論)[1]のようにシンプルなものから,階層型ニューラルネットワークのひとつである自己組織化マップ[2],現在もっとも性能のよい識別器のひとつであるSVM(Support Vector Machine)[3]などがよく用いられている.ジェスチャ的な動作の認識にはDTW(Dynamic Time Warping)[4]などの波形比較アルゴリズムが用いられる.

認識する状況と用いるセンサの例
状況 必要なセンサと特徴量
ある場所にいる GPSから取得した位置の現在値
移動中 GPSから取得した位置の変化量
回転している 地磁気センサから得た値の変化量
立っている/歩いている/自転車に乗っている 腕や足に装着した加速度センサの一定期間での平均値および分散値
メール着信 メーラから得た現在情報
財布をとり出す RFID読み取りの現在値
12時ちょうど 時刻の現在値
10分後 時刻の変化量
暑い 温度センサの現在値
暑くなってきた 温度センサの値の変化量
腕を一回転 加速度センサの一定期間の波形

以上の手順をもとに,状況とその認識方法を定義し,学習データを蓄積すれば前章で述べたようなアプリケーションが構築できる.実際に,加速度センサを両手首,腰,両足首に装着したユーザが,大学キャンパスにおいて研究室から売店に飲み物を買いに行ったときの具体的なセンサ値とそのときの動作を下図に示す.図から,歩いているときにはセンサに大きな揺れが見られ,自転車に乗っているときには小さな揺れが,静止しているときにはほとんど動きがない様子がわかる.このような波形特徴をラベリングして記録しておくことで,行動の認識が可能になる.


graph
加速度データの例

3へ (続きを読む)

参考文献

[1] G. Shakhnarovich, T. Darrell, and P. Indyk: Nearest-Neighbor Methods in Learning and Vision, The MIT Press (2005).
[2] T. Kohonen: Self-organizing Maps, Springer (1995).
[3] V. Vapnik: The Nature of Statistical Learning Theory, Springer (1995).
[4] C. S. Myers and L. R. Rabiner: A Comparative Study of Several Dynamic Time-Warping Algorithms for Connected Word Recognition, The Bell System Technical Journal, Vol. 60, pp. 1389--1409 (1981).

連絡先

mail

tsutomu[[at]]eedept.kobe-u.ac.removehere.jp